文化遺産の経済学 - ミュージアム

ミュージアムには、収蔵品の保存の役割と一般市民への展示の役割とがある。ミュージアムは商業的に経営することも、非営利基盤で経営することも可能である。非営利で行う場合、ミュージアムは公共財にまつわる問題に直面する。つまり、自己資金のみで維持するか、あるいは補助金の交付を受けるかという問題がある。

ミュージアム特有の問題の1つとして、収蔵品の莫大な価値と予算との不均衡が挙げられる。また、ミュージアムは地代の高い都市の中心部に位置していることが多いので、展示場所を拡張することには限界がある。米国のミュージアムでは、収蔵品の約半数しか展示されていない。欧州のミュージアムの中には、フランスのポンピドゥー・センターのように、収蔵品の5%しか展示されていないところもある。

展示以外にも、ミュージアムは、カタログや複製品のような関連生産物から収入を得ている。収蔵品を作り出していくという無形の生産もミュージアムは行っている。ミュージアムは、世の中にある多くの作品の中から専門知識に基づいて選択し、収蔵品を作り出している。それによって、単なる作品の存在にそれ以上の価値を加えている。

保存と展示という2つの目的の間で、ミュージアムは選択しないといけない。一方では、ミュージアムは、保存上の理由から、できる限り少数の作品だけを展示することにし、あまりよく知られていない作品を集め、専門的な客のみを入館させ、知識と研究を促進したい。他方では、 展示という目的からは、市民からの需要を満たし、多くの客を魅了するには、様々な種類の主要な作品を展示する必要がある。政府が、保存と展示という2つの目的の間で選択を行うとき、経済学の契約理論を用いることが役立つ。契約理論によって、求められる結果を出すために様々なミュージアム運営者にどのようにインセンティブを与えるかが分かる。

 

参照:Wikipedia「文化経済学